十里木の別 荘---Hose + 1999
(新建築住宅特集99/06、GAhouses60掲載時の設計主旨文です。)
いわゆる生活をするための器である『住宅』と違い、休息に訪れる『別荘』は求められる条件も制約も少ない。ただしそれは自由であることとは違う。『別
荘』に求められるものは『住宅』とは別に存在している。それは特異な形態ではなくもっと機能的なものである。
富士山の裾野の別荘である。夏の避暑に最適の場所であり、冬場は寒さが厳しい。クライアントは初老の姉妹夫婦であるが、使用するのはその子供たち、孫たちも含めた人々である。敷地は周りを木々に囲まれていて、10度の傾斜をもち、隣地との間には3〜5メートルの崖がある。
私はここで、『住宅』が成立するための単純な答えに”プラス”をすることで、『別
荘』という特殊解を導き出すと同時に、一般解つまり『住宅』のあり方を捉え直せるのではないかと考えた。
敷地の傾斜のため、まずコンクリートで基底部をつくり、そこに木造の箱を載せることによって『住宅』の機能を確保し、それにメッシュで覆われた箱をプラスしている。メッシュスペースはポリカーボネートルーフ、ステンレスメッシュ、ポリエチレンネットによって出来ている。大きな蚊帳であると同時にプレイコートにもなる機能的性能に加え、周囲が透過され光が反射される。モワレの模様を浮き上がらせ木々の陰を映しながら自然と微妙な関係をつくり出す。