第1話 設計を開始した当初は、別荘なので条件が少ないし、思いきってやってやれ、という気分でした。スケッチを描き、模型をつくり、ああでもないこうでもないと試行錯誤し出来た案は、L字型の平面で、ななめ上から見るとハートの形の建物でした。 ![]() |
第2話 作業の末、2間×9間の2階建ての木造と、はなれのようなお風呂場があり、その間がテラスになっている、というごくシンプルな姿が新鮮に見えました。敷地に対して自然に建ち、テラスや広間が周りの樹木に囲まれた、気持ちの良い場所になっていました。この時に、余計なものは要らないのだ、と実感したのです。取り巻く環境と建物の関係こそが、ここでは、とても重要だったのです。 ただ、もうひとつここで重要だったことは、余計なものを取り除いていった結果、全く新しいアイデアをそこにプラスすることができたことでした。 それが、つまり、メッシュで囲まれた半屋外空間なのです。 ガラス越しに、もしくは網戸越しに内部の人は外部と接している、というのが、現実の家の姿です。フルオープンでガラスが開きます!とか、はめ殺しの透明なガラスは外部と一体感を持てます!とか言っても結局住む人は、外部との間に境界をもうけています。その境界をもっと外に持っていき、空間にしてしまいたい、と思ったわけです。まわりからは、メッシュの空間は檻のようだ!と言われましたが、それは檻でなく、柔らかな浸透膜のようなものです。実際の表情や身体感覚は包まれるような感じです。メッシュが全然開閉できなくて良くない、とも言われました。しかし、開閉できる装置のようなものを目指したものではありません。あくまで、その場所は、網戸の網だけ、もしくはガラス窓のガラスだけが空間になったものなのです。 ![]() ![]() |